評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 上巻
皆川 ゆか
評伝シャア・アズナブル 《赤い彗星》の軌跡 下巻
皆川 ゆか
この著者は本当にシャアが好きなんだろうなあ。
シャアだけの視点でガンダムをファーストから逆襲のシャアまで淡々と、その過程を通して、シャアと言う人物像を解説していきます。アニメのキャラなのに。
でもそこまでやらせるところにガンダムと言う作品のシャアと言う強いキャラクターが生きていけるとも言えるでしょうか。
話の筋を追っているのは、1巻では「一年戦争」のシャアを。そして、2巻ではZガンダム時代の、クワトロバジーナ、そしてネオジオン総帥のシャアを追っていっていきます。
ということで、現在連載中のガンダムオリジンの隙間をうめるような話については追っていません。そう言う意味でTV版こそガンダムと言う人にとってみやすい構成とも言えますでしょうね。
まあ、興味ある人はオリジン読んでいるでしょうけどね。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN(9)
安彦 良和 矢立 肇
この本を読んでみて改めて思ったのは、シャアと言う男はどこまで不器用なのか、というところでしょうね。ある意味自分の生まれによる「ニュータイプの大義」。このために自分自身が不器用に戦争を巻き込んでいく。
また、その自分自身だけを信用するところがあるので、周りに思った以上に良い人材がそろっていかない。なので、後継者とも言える人間がいないところが彼の悲劇ともいえるだろう。
そして彼自身がこだわった「ニュータイプ」。この力はアムロやララという、超一流の存在からすれば、かれは「2流のニュータイプ」の烙印と戦う事になる。
それを払拭するために、ネオジオン総帥となっても自分自身で戦場に先頭に立たなくては行けない。これもある意味、指導者としては不合格と言えるだろう。
シャアと言う男は、指導者としてはギレンの様に理に聡い訳でもない。例えばZガンダムであのままエゥーゴの指導者として地球連邦の指導者レベルまで行く事ができたのではないか、とも書かれている。そのことには同意出来る。
でもそんな不安定な彼だからこそ、見ていてハラハラさせられて、つい見続けてしまう魅力になるんでしょうな。
まじめなシャア論でしたよ。
シャア好きな人は、彼だけを語られていますので、楽しんで読めるかと思います。