声の狩人 開高健ルポルタージュ選集 (光文社文庫)
開高 健
本屋さんに行ったら、開高健の新作が置いてある? どういう事と思って、手に取ってみたところ、そうか昔の作品を改めて編集して文庫にして発売されたようですね。
この本のお話は、1962年に連載されたルポルタージュのようですね。
取り上げられた題材は、イスラエルで行なわれたナチスのホロコーストに対する裁判、「アイヒマン裁判[G]」。
知っている人は知っているかと思うが、ヒトラーの命令でアイヒマンが実行したとされる、ユダヤ人の大虐殺。第二次大戦後、アイヒマンは、アルゼンチンに逃亡。しかし、イスラエルの諜報機関モサドのてにより、イスラエルへ引っ立てられ、裁判を受ける事となる。
その時の模様を、開高健らしい、ニヒリズムにユーモアを加えた感じで伝えられている。
世紀の裁判とは言われたが、やり取りが、非常にかみ合わなかったようだ。
その模様が描かれているが、アイヒマンに対して裁判官が色々と問い詰めていくが、命令されてやったとのらりくらりと口撃から逃れていく。しかし、話が哲学に及んでいくと急に饒舌になるアイヒマン。
その模様は、イスラエルの人たちは苦虫を噛みながら聞いていたようだ。
結局は死刑になる。
しかし、開口は最後の部分にこう書いている。そこが印象的だった。
「イェルサレムでの事件が”裁判”でなく”劇”であったということを考える」