パン屋のお金とカジノのお金はどう違う??ミヒャエル・エンデの夢見た経済・社会
広田 裕之
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ミヒャエル・エンデ[G] 知っている人は知っていると思うけど、「はてしない物語 」や「モモ?時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」と言った作品を書いた有名な作家。そして、経済を語るめずらしい作家でも会ったのです。その、ミヒャエル・エンデが、夢見た経済とはどんな経済だろうというのが、この本に取り上げられています。それが、この本にたとえられている、パン屋のお金とカジノのお金ということです。
さて、パン屋のお金なら意味は「働いたお金」と言う事になりますが、「カジノのお金」ってどういう事でしょう。それは、金融市場のお金の事をさしています。今の経済は働いた代価で得られる「基本的なお金」よりも、株式や金融商品の利子のほうが大きくなってしまう、お金が別の意味で動いている世界です。そこには、グローバル化や効率化といった「豊かになる」と言う意味が違ってくる「欲」とか、「所有と独占」と言った別ベクトルが非情に強くなってしまう、なんとも言い難い、分かりにくい社会構図になっています。そこでエンデは提唱しています。働いたお金と金融市場で扱っているお金は違うものです。ならば別々にお金を用意したほうが良いのではないか。
それがこの本のタイトルのようです。
確かに、今の金融市場について、子供に説明する事って難しいですよね。というか、大人である程度理解を持って、株式や投資信託などに手を付ける人って、まだまだ少数派なのでしょうか。
そういう意味で、今の経済の事を理解し、そして説明するにはどうしたらいいか。そう考える時には役に立つ一冊かもしれません。だからといって、経済システムまで変更すべきかはわからないですけどね。
この本を読んでみて、あらためて「グローバル化」、「効率化」といったキーワードになんとなく否定的なイメージを持ってしまいました。もっと、「豊かに」「幸せ」に暮らすことを重視しなくてはいけない気がしました。ここら辺は以前紹介した「ナマケモノでも「幸せなお金持ち」になれる本」に通じるものがあるかもしれません。先を見る事も重要だけど、もっと足下を見る事、今出来る事の重要さというのを改めて考えさせられたり。また、効率化と言う面では、均一的な住居に暮らし、歴史を否定しかねない日本人にとって、苦い薬のような記述もいっぱいありましたね。
なんか考えさせられる一冊でしたね。一気に読むと言うのが辛い一冊です。